『ひきなみ』
千
早
茜
が
描
く
『
ひ
き
な
み
』
は
、
瀬
戸
内
の
島
と
い
う
美
し
い
舞
台
か
ら
始
ま
る
、
時
を
超
え
た
再
会
の
物
語
で
あ
る
。
小
学
生
の
葉
が
同
級
生
の
真
以
に
抱
い
た
特
別
な
感
情
と
、
二
十
年
の
時
を
経
て
東
京
で
疲
れ
切
っ
た
大
人
に
な
っ
た
葉
が
再
び
真
以
を
求
め
る
気
持
ち
が
、
二
部
構
成
の
中
で
見
事
に
呼
応
し
て
い
る
。
物
語
の
核
に
あ
る
の
は
、
現
代
社
会
が
抱
え
る
重
苦
し
い
現
実
だ
。
職
場
で
の
理
不
尽
な
扱
い
、
複
雑
に
絡
み
合
う
人
間
関
係
、
そ
し
て
都
市
部
で
の
孤
独
感
な
ど
、
多
く
の
読
者
が
共
感
で
き
る
要
素
が
丹
念
に
織
り
込
ま
れ
て
い
る
。
し
か
し
作
品
が
単
な
る
社
会
派
小
説
に
と
ど
ま
ら
な
い
の
は
、
千
早
茜
の
繊
細
な
心
理
描
写
と
、
希
望
を
失
わ
な
い
人
間
へ
の
信
頼
が
あ
る
か
ら
だ
ろ
う
。
特
に
印
象
深
い
の
は
、
登
場
人
物
た
ち
が
発
す
る
「
戦
わ
な
く
て
い
い
」
と
い
う
言
葉
の
温
か
さ
で
あ
る
。
競
争
社
会
で
疲
弊
し
た
心
に
寄
り
添
う
よ
う
な
、
優
し
い
眼
差
し
が
作
品
全
体
を
包
ん
で
い
る
。
文
章
も
映
像
的
で
読
み
や
す
く
、
最
後
ま
で
一
気
に
読
み
進
め
た
く
な
る
魅
力
が
あ
る
。
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千早茜が描く『ひきなみ』は、瀬戸内の島という美しい舞台から始まる、時を超えた再会の物語である。小学生の葉が同級生の真以に抱いた特別な感情と、二十年の時を経て東京で疲れ切った大人になった葉が再び真以を求める気持ちが、二部構成の中で見事に呼応している。 物語の核にあるのは、現代社会が抱える重苦しい現実だ。職場での理不尽な扱い、複雑に絡み合う人間関係、そして都市部での孤独感など、多くの読者が共感できる要素が丹念に織り込まれている。しかし作品が単なる社会派小説にとどまらないのは、千早茜の繊細な心理描写と、希望を失わない人間への信頼があるからだろう。 特に印象深いのは、登場人物たちが発する「戦わなくていい」という言葉の温かさである。競争社会で疲弊した心に寄り添うような、優しい眼差しが作品全体を包んでいる。文章も映像的で読みやすく、最後まで一気に読み進めたくなる魅力がある。