『劇場という名の星座』
小
川
洋
子
の
手
に
か
か
る
と
、
劇
場
と
い
う
空
間
が
ま
る
で
生
き
て
い
る
か
の
よ
う
に
立
ち
上
が
っ
て
く
る
。
帝
国
劇
場
の
一
時
休
館
と
い
う
現
実
的
な
出
来
事
を
背
景
に
、
そ
こ
に
集
う
人
々
の
心
の
襞
を
丁
寧
に
掬
い
上
げ
た
連
作
短
編
集
で
あ
る
。
白
杖
を
持
つ
父
の
残
し
た
手
紙
か
ら
始
ま
る
物
語
で
は
、
家
族
の
記
憶
が
静
か
に
揺
れ
動
く
。
舞
台
裏
を
歩
き
回
る
少
年
の
物
語
は
、
探
し
続
け
る
と
い
う
行
為
の
美
し
さ
を
教
え
て
く
れ
る
。
観
客
席
に
座
る
人
だ
け
で
な
く
、
案
内
係
や
エ
レ
ベ
ー
タ
ー
係
と
い
っ
た
、
普
段
は
見
過
ご
さ
れ
が
ち
な
存
在
に
ま
で
温
か
い
眼
差
し
が
注
が
れ
て
い
る
の
が
印
象
深
い
。
著
者
特
有
の
透
明
感
の
あ
る
文
体
が
、
劇
場
の
持
つ
特
別
な
空
気
感
と
見
事
に
調
和
し
て
い
る
。
読
み
終
え
た
後
、
実
際
に
そ
の
客
席
に
身
を
置
い
て
、
暗
闇
の
中
で
舞
台
を
見
上
げ
て
み
た
く
な
る
。
記
憶
と
現
実
が
交
差
す
る
劇
場
と
い
う
場
所
の
魔
法
を
、
こ
れ
ほ
ど
美
し
く
切
り
取
っ
た
作
品
は
珍
し
い
。
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小川洋子の手にかかると、劇場という空間がまるで生きているかのように立ち上がってくる。帝国劇場の一時休館という現実的な出来事を背景に、そこに集う人々の心の襞を丁寧に掬い上げた連作短編集である。 白杖を持つ父の残した手紙から始まる物語では、家族の記憶が静かに揺れ動く。舞台裏を歩き回る少年の物語は、探し続けるという行為の美しさを教えてくれる。観客席に座る人だけでなく、案内係やエレベーター係といった、普段は見過ごされがちな存在にまで温かい眼差しが注がれているのが印象深い。 著者特有の透明感のある文体が、劇場の持つ特別な空気感と見事に調和している。読み終えた後、実際にその客席に身を置いて、暗闇の中で舞台を見上げてみたくなる。記憶と現実が交差する劇場という場所の魔法を、これほど美しく切り取った作品は珍しい。