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面白い小説本気レビュー

手嶋龍一 武漢コンフィデンシャル

『武漢コンフィデンシャル』

著者:手嶋龍一

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『武漢コンフィデンシャル』

手嶋龍一 著

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 現代史の暗部に光を当てる、圧倒的な構想力に息を呑む作品である。新型コロナウイルスの発生源という世界的な謎を、諜報小説の手法で解き明かそうとする試みは実に野心的だ。 物語は1920年代の武漢から始まり、文化大革命の嵐、そして現代の香港へと時空を自在に跳躍する。一見バラバラに見える各時代のエピソードが、読み進むうちに一本の線で結ばれていく構成の妙には舌を巻いた。特に李志傑という男性の波乱に満ちた人生を軸に、中国近現代史の激動が描かれる部分は、まさに歴史小説としての醍醐味がある。 MI6の諜報員コンビが繰り広げる知的な会話と駆け引きも本作の大きな魅力だ。彼らが「謀略の香港」で展開する活動は、リアルタイムの国際政治情勢と見紛うほどのリアリティを持っている。フィクションでありながら、まるで極秘文書を読んでいるような緊迫感が全編を貫いており、一気に読み切ってしまった。歴史の影に隠された真実に迫る、知的興奮に満ちた傑作である。
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