『街とその不確かな壁(上)』
夕
暮
れ
の
川
べ
り
で
少
女
が
語
っ
た
「
高
い
壁
に
囲
ま
れ
た
街
」
の
話
か
ら
、
読
者
は
一
気
に
村
上
春
樹
の
創
造
し
た
異
界
へ
と
誘
わ
れ
る
。
影
を
持
た
な
い
人
々
、
針
の
な
い
時
計
台
、
金
色
の
獣
た
ち
―
こ
れ
ら
の
不
思
議
な
モ
チ
ー
フ
が
織
り
成
す
世
界
は
、
ど
こ
か
懐
か
し
く
も
新
鮮
な
魅
力
に
満
ち
て
い
る
。
特
に
印
象
的
な
の
は
、
壁
の
内
側
に
あ
る
図
書
館
で
の
静
謐
な
時
間
の
描
写
で
あ
る
。
語
り
手
が
過
ご
す
そ
の
空
間
は
、
現
実
の
喧
騒
か
ら
切
り
離
さ
れ
た
聖
域
の
よ
う
で
、
読
ん
で
い
る
私
自
身
も
そ
の
静
寂
に
包
ま
れ
る
感
覚
を
味
わ
っ
た
。
村
上
文
学
特
有
の
並
行
世
界
の
魅
力
が
存
分
に
発
揮
さ
れ
た
場
面
だ
ろ
う
。
物
語
は
前
半
こ
そ
既
知
の
村
上
ワ
ー
ル
ド
を
思
わ
せ
る
が
、
中
盤
以
降
は
予
想
も
し
な
い
方
向
へ
と
舵
を
切
る
。
「
影
と
は
何
か
」
「
本
当
の
自
分
と
は
何
か
」
と
い
う
根
源
的
な
問
い
が
、
読
者
の
心
の
奥
底
に
静
か
に
響
い
て
く
る
。
上
巻
を
読
み
終
え
た
今
、
下
巻
へ
の
期
待
で
胸
が
高
鳴
っ
て
い
る
。
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夕暮れの川べりで少女が語った「高い壁に囲まれた街」の話から、読者は一気に村上春樹の創造した異界へと誘われる。影を持たない人々、針のない時計台、金色の獣たち―これらの不思議なモチーフが織り成す世界は、どこか懐かしくも新鮮な魅力に満ちている。 特に印象的なのは、壁の内側にある図書館での静謐な時間の描写である。語り手が過ごすその空間は、現実の喧騒から切り離された聖域のようで、読んでいる私自身もその静寂に包まれる感覚を味わった。村上文学特有の並行世界の魅力が存分に発揮された場面だろう。 物語は前半こそ既知の村上ワールドを思わせるが、中盤以降は予想もしない方向へと舵を切る。「影とは何か」「本当の自分とは何か」という根源的な問いが、読者の心の奥底に静かに響いてくる。上巻を読み終えた今、下巻への期待で胸が高鳴っている。