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面白い小説本気レビュー

川上未映子 春のこわいもの

『春のこわいもの』

著者:川上未映子

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『春のこわいもの』

川上未映子 著

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 この短編集を読み終えて最初に感じたのは、背筋がざわざわする独特の後味である。六つの物語はいずれも、一見すると私たちの日常と何ら変わらない風景から始まる。しかし、ページをめくるうちに、その穏やかな表面の下に蠢く暗いものが徐々に姿を現してくる。 特に印象的なのは、コロナ禍という時代背景を巧みに織り込んだ描写である。マスク越しの表情の読めなさ、人々の間に漂う疲弊感、そして閉塞した社会の中で膨らんでいく負の感情。これらすべてが恐怖の土台として機能している。川上未映子の筆致は、SNSの世界や身近な人間関係を通じて、私たちが普段見て見ぬふりをしている人間の本質を容赦なく暴き出していく。 各短編の結末が曖昧に終わることも、この作品の魅力のひとつである。読者は物語の余韻の中で、登場人物たちのその後を想像せざるを得ない。その想像こそが、真の恐怖なのかもしれない。
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