読書感想文

面白い小説本気レビュー

朝比奈秋 サンショウウオの四十九日

『サンショウウオの四十九日』

著者:朝比奈秋

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『サンショウウオの四十九日』

朝比奈秋 著

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 開幕から漂う独特の空気感に、思わず立ち止まってしまった。結合双生児として生まれた姉妹の物語は、読み手の認識を静かに揺さぶり続ける。会話の微細なズレ、語りの巧妙な仕掛けに気づいた瞬間の「なるほど」という驚きは、この作品でしか味わえない特別なものである。 朝比奈秋の医師としての知見が、特異な身体性を通じて「自我とは何か」という普遍的なテーマへと昇華されていく過程が見事だ。意識の境界線、記憶と想像の交錯、そして存在そのものへの根深い問い――これらが絡み合いながら、読者を深い思索の世界へと誘う。 終盤に向けて明かされる真実の重みは計り知れない。哲学的でありながら人間味に溢れた筆致で、特別な境遇にある人物の内面を丁寧に描き出している。一度読み終えても、その余韻は長く心に残り続けるだろう。芥川賞候補作としての実力を十分に感じさせる、強烈な読書体験である。
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