読書感想文

面白い小説本気レビュー

柚月裕子 風に立つ

『風に立つ』

著者:柚月裕子

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『風に立つ』

柚月裕子 著

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 警察小説の名手として知られる柚月裕子が、今度は全く異なる筆致で家族の物語を紡いだ作品である。岩手・盛岡の南部鉄器工房という職人の世界を背景に、父親が突然決めた補導委託の受け入れによって始まる親子関係の変化を、繊細かつ力強く描き出している。 息子の心境が実に巧妙に表現されており、父への複雑な感情が手に取るように伝わってくる。質問したくても踏み出せない歯がゆさ、理解したいのに素直になれないもどかしさに、読み手も胸が締め付けられる思いを味わうだろう。一方で預かることになった少年が徐々に心の扉を開いていく過程は、読者の心を温かく包み込む。 物語の前半はじれったい展開が続くものの、それがあるからこそ後半の感動が一層深く響く。家族だからこそ言えない想い、伝わらない気持ちを抱える全ての人の心に、静かな勇気を与えてくれる秀作である。
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