読書感想文

面白い小説本気レビュー

ジョン・ル・カレ ナイロビの蜂 上

『ナイロビの蜂 上』

著者:ジョン・ル・カレ
翻訳:加賀山卓朗

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『ナイロビの蜂 上』

ジョン・ル・カレ 著 (加賀山卓朗 訳)

調

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 妻を失った外交官の静かな闘いを描いた、骨太なスパイ小説である。ナイロビで起きた悲劇から始まる物語は、表面的な事件の裏に潜む巨大な陰謀へと読者を導いていく。 ル・カレの筆致は相変わらず見事で、抑えた筆調の中に深い感情の波動を込めている。主人公ジャスティンの心境の変化を丁寧に追いながら、国際的な権力構造の闇を浮き彫りにする手法は秀逸だ。上巻では主人公が真実への扉を開くまでの過程がじっくりと描かれ、読者は彼と共に疑念と発見の旅路を歩むことになる。 確かに読み進めるには集中力を要するが、それこそがこの作品の魅力でもある。複雑に絡み合う人間関係と政治的背景を理解しながら読む醍醐味は、軽い娯楽小説では味わえない充実感をもたらしてくれる。重厚なテーマに真摯に向き合った、現代文学の傑作と呼ぶにふさわしい一冊である。
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