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面白い小説本気レビュー

古矢永塔子 夜しか泳げなかった

『夜しか泳げなかった』

著者:古矢永塔子

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『夜しか泳げなかった』

古矢永塔子 著

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 教師と覆面作家という設定だけでも十分に興味深いが、この作品の真骨頂は「創作とは何か」という問いかけにある。主人公が直面するのは、自分だけのものだと思っていた大切な記憶が、まったく知らない他人によって物語として世に送り出されているという衝撃的な現実だ。 単純な盗作騒動として読み始めても、次第に浮かび上がってくるのは、死者との記憶を生者がどう扱うべきかという重厚なテーマである。人気作品として消費されていく過去の痛みは、創作に携わる者だけでなく、大切な人を失った経験のある読者の心にも深く響く。 余命をテーマにした作品は数多く存在するが、本作はそうした既存の枠組みを巧みに利用しながら、全く異なる視点から死と向き合っている。タイトルの意味が明らかになる瞬間の切なさは、読了後も長く心に残り続けるだろう。
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