『まいまいつぶろ』
第
九
代
将
軍
・
徳
川
家
重
と
い
え
ば
、
歴
史
の
教
科
書
で
は
「
暗
愚
」
と
さ
れ
が
ち
な
人
物
で
あ
る
。
し
か
し
本
作
は
、
そ
ん
な
定
説
を
根
底
か
ら
覆
す
斬
新
な
視
点
で
家
重
を
描
き
出
し
て
い
る
。
言
葉
が
う
ま
く
話
せ
な
い
家
重
の
心
の
内
を
理
解
で
き
る
の
は
、
身
分
の
低
い
小
姓
・
兵
庫
た
だ
一
人
。
こ
の
二
人
の
関
係
性
が
実
に
切
な
い
の
だ
。
興
味
深
い
の
は
、
家
重
の
「
声
」
が
兵
庫
を
通
じ
て
伝
え
ら
れ
る
こ
と
で
生
ま
れ
る
疑
念
で
あ
る
。
そ
れ
は
本
当
に
将
軍
の
意
思
な
の
か
。
周
囲
の
老
中
た
ち
が
抱
く
猜
疑
心
が
、
江
戸
城
内
に
緊
迫
し
た
空
気
を
生
み
出
し
て
い
く
。
政
治
的
な
駆
け
引
き
と
人
間
ド
ラ
マ
が
絶
妙
に
絡
み
合
い
、
読
者
を
最
後
ま
で
引
き
込
ん
で
離
さ
な
い
。
時
代
小
説
に
馴
染
み
の
な
い
読
者
で
も
、
こ
の
作
品
な
ら
自
然
と
江
戸
時
代
の
世
界
に
入
り
込
め
る
だ
ろ
う
。
歴
史
上
の
人
物
に
対
す
る
既
成
概
念
が
覆
さ
れ
る
快
感
と
、
深
い
人
間
愛
が
心
に
残
る
一
冊
で
あ
る
。
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第九代将軍・徳川家重といえば、歴史の教科書では「暗愚」とされがちな人物である。しかし本作は、そんな定説を根底から覆す斬新な視点で家重を描き出している。言葉がうまく話せない家重の心の内を理解できるのは、身分の低い小姓・兵庫ただ一人。この二人の関係性が実に切ないのだ。 興味深いのは、家重の「声」が兵庫を通じて伝えられることで生まれる疑念である。それは本当に将軍の意思なのか。周囲の老中たちが抱く猜疑心が、江戸城内に緊迫した空気を生み出していく。政治的な駆け引きと人間ドラマが絶妙に絡み合い、読者を最後まで引き込んで離さない。 時代小説に馴染みのない読者でも、この作品なら自然と江戸時代の世界に入り込めるだろう。歴史上の人物に対する既成概念が覆される快感と、深い人間愛が心に残る一冊である。